涙の雨
引き戸を開けた先には
デスクの椅子に座っていた望月が
驚いた顔で俺を見ていた
「…もう来てくれないかと思った」
ニッコリ笑った
「前…通っただけですから」
俺は恥ずかしくなって
望月から目線をそらした
「でも遼太は来てくれた。どんな理由があっても」
椅子から立ち上がると
俺に向かって歩いてきて
ギュッと力強く抱きしめた
ほのかに香る香水の匂い
だけど若干…
「先生、煙草臭いです」
「換気扇回してたんだけど、匂いついちゃったかな?」
―俺、平然と喋ってる
さっきまで心臓バクバクだったのに
「何で…俺を呼んだんですか?」
俺は望月の腕の中で聞いた
「遼太に会いたかったから」
「―何で会いたかったんですか?」
「遼太が可愛いから」
―やっぱりそっちか
女てして俺を見てるって事か
「俺が…女みたいだからですか…?」
思わず声が震えた
その言葉に
望月は俺の顔を覗き込んできた
「俺は女じゃなくて男です。そうやって…女を扱うような言い方をするの、止めて下さい」