涙の雨
俯きながら横目で望月を見ると
俺から顔をそらし、違う場所を見ながら新しい煙草を吸っていた
―絶対怒ってるよ、アレは
望月の機嫌が悪い時
それは煙草を次から次へ吸う時だ
前に保健室で犯された時も
望月のデスクの上には、吸い殻が山のように積まれた事があった
俺はずっと話せなくて
暫く黙り込んでると、望月が重い口を開いた
「それとも俺に対するあてつけ?」
「―え?」
顔を上げて望月を見ても
まだ俺に顔をそらしたままだ
「好きでも無いのに付き合ってるなんて…、今の中学生ってスゴいんだね」
笑いながら話す望月
その言葉に
俺は背筋が凍る思いをした
「何言ってるんですか、俺はそんな気持ちで…」
「―だって博文の事は好きじゃないんだろ?肯定も否定も、しなかったじゃないか」
声の口調が荒っぽく聞こえてくる
その態度に不安を感じた俺は
望月の腕に掴み、こっちを向いて下さいと言った
望月は無言のまま俺を見つめると
一瞬、優しく笑ってくれて
機嫌が治ったんだと勘違いした俺は
一気に不安が飛んでいった