涙の雨
それほど勇気が必要だったし
相手が望月だったから
よけいに気持ちが高ぶっていたんだと思う
だけどあの時の俺は
生きててよかったなって
しみじみ感じていた
再び望月の腕の中にいられた事と
まだ俺の事を
好きでいてくれたから
それだけで充分かなって思いながら
一人にやけて夕日を眺めていた
「ん…?遼太?」
隣で寝ていた望月が起き出した
「あ…起こしちゃいました?」
俺が望月の方へ体を向けると
望月は寝ぼけながらも、俺を抱きしめてくれる
「雨…止んだんだね」
「たぶん、俺達が寝てる間に止んだんだと思いますよ」
俺は望月の胸に顔を埋めながら言った
あったかい人肌
あまりにも気持ちよくて、また眠っちゃいそうだ
「今、起きたの?」
「はい。夕日が眩しくて」
笑いながら目を閉じると
望月の心臓の鼓動が
トクン…トクン…トクンとゆっくり聞こえてきた
―尚輝さんの音だ
立った状態で抱きしめられる時も
ちょうど俺の耳の辺りに望月の心臓がくる