涙の雨
望月が顔を上げて、俺をジッと見つめてくる


それは

今にでも泣き出しそうな表情だった




「この先もずっと遼太といたかったから…離れたくないし、離したくないから」



やっと聞けた望月の本音



俺はそれだけで胸がいっぱいになった





「名古屋に帰ったら、毎日仕事に追われて東京には絶対に帰れない。無理矢理見合させられて、跡継ぎを要求される。したくない結婚をさせられて、好きでもない相手の子供を作るんだ。そういう生活が…俺を待ってるんだ」



まるでドラマのような現実に

俺はただ驚くばかりだった



本当にそういう人生を歩かなきゃいけない人が、目の前にいて



しかもそれが

自分の好きな人なんて…





「結婚…しなくちゃいけないんですか…?好きでも無いのに?」

「政略結婚って知ってる?互いの会社の為に結婚する事だよ」



その一言で

結婚に対するイメージがガラリと変わった




結婚っていうのは


お互いが好き同士で一緒になるものだと思っていたけど

望月みたいに



嫌々結婚しないといけない人もいるんだと

初めて知ったんだ
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