涙の雨
十二月二十五日


二十一時発
のぞみ一五九号、新大阪行


これが望月の乗る新幹線だった



本当は日が出てるうちに
帰ろうとしていたんだけど

俺のワガママを聞いてくれて

無理に時間を変えてもらったんだ





最後のひととき



最後の時間…





一秒でも望月と一緒にいたいから
学校が終わってすぐ望月の家に行った












「もう何にも無いんですね」


ガランとした望月の部屋を見て

胸にぽっかり穴がような感覚を覚えた




楽しかった思い出が
走馬灯のように頭によぎる



「荷物はみんなあっちに送ったからね」

「車はどうするんですか?」


備え付けのカウンターで

荷物をいじる望月に言った



「売ったよ、人気の車種だったからすぐに買い手が見つかったみたい。走行距離も結構あったけど高値で売れたんだ」


また…



思い出が一つ消えていく





辛いけどこれが現実なんだって

思うしかなかったんだ




「じゃ、そろそろ行こうか」


スーツで決めた望月は

アタッシュケースを持って、玄関へ歩いていく





俺は後ろ髪引かれながらも
部屋から出て行った
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