涙の雨

乗車三十分前



俺達はホームにあるベンチで

手を繋ぎながら座っていた


あれほど会話が途切れるほどあったのに

座った途端、何も喋らなくなってしまった




頭の中で会話を探しても
何を話していいかわからないし


望月も隣でどこか一点を見つめたまま


俺から顔をそらしていた



―何か…何か無いかな…




沈黙の時間さえもったいなくて
必死に考え込む俺





「…遼太さ、トヨエツが出てた愛の流刑地って覚えてる?」


突然、変な事を話し出した望月



「覚えてますよ、DVD借りて一緒に見ましたもんね」


R指定だったから、俺の誕生日過ぎてから見たんだ



望月がどうしても見たいと言っていたし





「法廷のシーンでトヨエツが言った言葉、覚えてる?」

そう言って

隣に座る俺を見つめてきた



「殺したいほど、人を好きになった事がありますか!って」




当時のテレビCMでも起用されてたその台詞は

俺も強い衝撃を受けた


「たしか…最初の方でしたよね?トヨエツが法廷に立って尋問?受けてる時」
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