涙の雨
「―花火大会?」
「そう、八月の六日に花火大会あるんだ。結構大きい大会でね、二万発ぐらい打ち上げられるんだよ」
保健室に行くやいなや
望月から聞いた花火大会
江戸川区という千葉よりの東京で
毎年行われる花火大会らしい
俺は墨田川花火大会の方が
昔から馴染みだったので
江戸川区と言われても
あまりピンと来なかった
「墨田川もいいけど、あっちの花火大会の方が俺は好きなんだ」
望月はそう言って笑っていた
「ねぇ…遼太、良かったら一緒に行かない?」
「―えっ!?」
誘ってくれたのは
意外にも望月からだった
「あっ、俺なんかでいいんですか…?」
あまりにも嬉しすぎて
意味不明な事を口走る俺
「嫌だなぁ、遼太。そんな事を聞くなんて野暮だよ。俺は遼太だから行きたいんだ」
眼鏡の奥に潜む目が
俺をジッと見つめてる
いつも真っ直ぐで
いつも俺だけを見てる優しい目
「遼太は俺とじゃ不満?」
「―そんな事ないじゃないですか!逆に…嬉しい…ぐらい…です」
自分で言った言葉なのに
急に恥ずかしくなってしまう