涙の雨
「ごめんね、遅くなっちゃって。思ってた以上に道路混んでて…」
「いえ、気にしないで下さい」
俺は笑ったまま望月に言った
実は、待ち合わせ時間から
既に三十分も過ぎていたが
俺は全く気にならなかった
というよりも三十分も過ぎていたのかと
駅前の時計を見て初めて気がついたぐらいだ
「隣、乗って?」
そう言うと
助手席のドアロックを解除した望月
俺はドキドキしながら助手席側に回り込み
そのまま車に乗り込んだ
「…ここからすぐだからね。開始時間までには間に合うから」
「はい、わかりました」
俺がシートベルトを締めながら言うと
望月はゆっくりとアクセルを踏み出した
車内は意外と狭く
運転席に座る望月ととても距離が近い
俺は横目で運転する姿をチラチラと見ていた
見慣れた白衣姿と違って
白のTシャツに
その上から赤と白のストライプのシャツを着ていて
ウォッシュ加工された黒のジーパン
首元にはネックレスを身につけている
オシャレな靴に有名ブランドの腕時計
俺と全く違う大人の着こなしに
自分の姿がやけに子供に見えた