涙の雨

「あの…何処に行くんですか?」

俺は私服の望月にドキドキしながら聞いた


「花火が見える最高の場所だよ」


前を見つめハンドルを握りながら笑う




俺はそれ以上何も聞けなかった



望月の笑顔に

胸がキュンと締め付けられる



その横顔もカッコよくて
ずっと見ていたいぐらい



「遼太、煙草吸ってもいい?」



その言葉に

はいと顔を赤くしたまま答える俺



片手で箱を持ちながら
器用に口で煙草を一本くわえる


そしてキンッと金属音と共にジッポに火をともし

手慣れた様子で煙草に火をつける




そんな一連の仕草も

俺は横でジッと見つめていた




―先生は何しててもカッコいいな…





自分も将来こういう大人になれるだろうか


優しくて

カッコよくて


いつも温かい

望月のような人間に













暫く走ると大きな陸橋を越え
千葉に入った

そして渋滞する車の間を上手く通り抜け
車は一際目立つ高層マンションへ




「最高の場所って…先生の家ですか!?」


俺はドーンとそびえ立つマンションを、窓から見上げてながら言った
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