涙の雨
ベッドの脇から出てきたのは


眼鏡をかけた一人の男だった



「先生、彼体調悪いみたいなんです」


賢二が俺に代わって

病状を話してくれる


「ふ~ん…どこか痛いの?」


白衣の胸のポケットには


“望月”


と書かれたネームカードがつけられていた



「何か…体が重いんです」

そう言うと


俺の額に手を当てて、熱を計りだした



「ん~、熱は無さそうだな」



―キーンコーンカーンコーン



その時チャイムが鳴り


ニ時間目の授業の始まりをしらせた




「とりあえず君は教室に戻って?」


「…遼太、あんま無理すんなよ?」



賢二の優しい言葉に

俺はサンキュと言い返した



そして賢二は保健室から出て行き


望月と二人きりになった



「とりあえず、そこに座って?」


言われた通り
丸い回転椅子に座る俺



望月は棚の中から体温計を取り出して


俺に差し出した




「念のために…ね?」


そう言うと


隣にあるもう一つの回転椅子に座った



俺はシャツのボタンを外し
体温計を脇にいれる
< 4 / 195 >

この作品をシェア

pagetop