涙の雨
「お!遼太じゃねぇか」
「山田先輩…?」
保健室に入ると
山田と望月が目の前で立ち話をしている様子だった
「元気かぁ~?遼太~?」
ズボンに手を入れニッと笑いながら
俺の頭をグリグリと力強く撫でる山田
「あ…はい」
俺は少し引き気味で言うと
上目使いで山田を見つめた
「じゃ、また来るぜ…」
そう言うと望月と俺に背を向け
「尚輝」
と言い残し、山田は保健室から出て行った
―尚輝…だって
望月を名前で呼べるのは自分だけなんだと
勝手に思い込んでいた俺は
一気にテンションが落ちた
「…遼太?」
望月が不思議そうな表情を浮かべて
俺の顔を覗き込む
「いえ…何でも無いです」
だけど明らかに落ち込んでるのは、一目瞭然
下にうつむいたまま
一人ですねる俺
―別にいいじゃんか
名前で呼んだって
頭の中でそう思っていても
自分以外の人が望月の名前を呼ぶ事に
どうしても納得がいかなかった
今思えば
あれは嫉妬だったんだと思う
初めて尽くしの俺にとって
“嫉妬”という言葉の意味すらわからなかったんだから