涙の雨
『まだ怒ってる?』
その日の夜
俺は自分の部屋で望月と電話をしていた
「別に…怒ってないです」
と言いながらも
口調はどこかそっけない俺
『博文とは、中三の時からちょくちょく話をしていてね。だから時々うちの方に遊びに来るんだ』
“博文”
―尚輝さんと先輩は
名前で呼び合う仲なんだ…
また一人で落ち込んだ
中三からだったら
三年間もずっと一緒
俺なんかより数倍も同じ時間を過ごしてる
当たり前の事なんだけど
その事実を突きつけられて、俺は少し辛くなった
望月と出会ってまだ数ヶ月しか経っていない
その間にいろんな事があったけど
俺は望月を好きになった
そして望月も
俺を好きになってくれた
でも無性に寂しく感じるのは
何故だろう…
『ねぇ遼太、今度の日曜日空いてる?』
携帯の向こうから聞こえる望月の声
「空いてますけど…」
俺はか細い声で言った
『良かったらさ、一緒に動物園行かない?』