涙の雨

その週の日曜日


俺は上野にいた












“上野動物園の特別入園券をもらってね。だから一緒に行こうと思って”



照りつける太陽


今だに鳴く蝉の声



立っているだけでも
汗がジワジワと出てくる


俺は動物園の入口で

望月と待ち合わせしていた




ホントは車で一緒に来ればよかったんだけど


俺は無理を言って

別々に待ち合わせをしてもらった





まだ望月と山田の関係が頭に残っていて


車内の密室空間で
まともに話せる自信がない




正直、待ってる時も


ずっと頭から離れなくて
自分自身が嫌になってた




望月との初デートなのに

心から喜べなかったんだ




本当だったら
嬉しくて前日から胸が踊るのに


この日が来てほしいって思う反面


もう一人の自分が

来て欲しくないって言ってるような気がしてた





結局心にモヤがかかったままこの日が来て


俺は動物園にいる





―こんな状態じゃ

尚輝さんに気を使わせちゃうな…




俺は今日一日元気な振りをする事に決めた


そうすれば

自然と嫌な事が、忘れられるかもしれないと思ったからだ
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