涙の雨

園内はたくさんの人で賑わっていた


家族連れや恋人同士


もちろん俺達もその中の一部



「尚輝さんっ!どこから行きます!?」


俺はパンフレットを見ながら
望月に聞いた


「遼太の行きたい所からでいいよ」


ニッコリ笑いながら眼鏡を直す


「ん~…」


悩みながら真っ直ぐ歩いて行くと

象のブースが見えてきた



「あっ!象だ!」


俺はつい小走りでブースに近づく






小五の時に遠足でここに来た



と言っても当時の俺から見たら
つい二年前の出来事



特に懐かしむ事もなかったが

やっぱり動物を目の前にすると
無邪気にはしゃいでしまう


「鼻で自分の体に水かけてますよ!」


俺は指を差しながら望月に言った


望月も隣で本当だと言って笑っている







まだ子供だった俺は

ただ普通に動物園を楽しんでいた




今だったら余計な事ばかり考えて

純粋にデートを楽しめなかったかも





望月と会うまでのあの落ち込みが嘘のように


俺は初デートを満喫していた
< 49 / 195 >

この作品をシェア

pagetop