涙の雨

―世界中の誰が見ても

俺と尚輝さんが恋人だなんて気づかないんだろうな




それに

自分の好きな人が男ですだなんて
当時の俺には言える勇気さえなかった




望月の事は好きだけど

人前じゃ手も繋げない



望月の事は好きだけど

人前じゃ抱きつく事も出来ない



もしかしてそれは


まだ自分の中で
同性愛を認めたくないという気持ちがあるんじゃないかと

思ってしまうもう一人の自分がいた










「ごめんね、待った?」

望月が手に紙袋を持って

小走りで俺に近づいてくる



「…お土産買ったんですか?」


俺はベンチから立ち上がり笑いながら聞く



「あぁ、せっかく来たからね」


望月はサラサラの髪を掻き上げて言った




「じゃ…帰ろうか」


その時

望月が俺の頭をポンと優しく撫でてくれた



胸が…

キュンと締め付けられる




「…はい」

俺は顔を赤くしながら望月を見上げた






十二歳の俺


あの時はまだまだ子供だったけど


望月を好きな気持ちは
誰にも負けたくない



そう思ったと同時に


山田の顔が一瞬ちらついた
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