涙の雨
朝見た自分の姿
目のまわりは紫色に腫れていて
ボクシングで殴られたボクサーのような顔をしていた
ボールを当てられた左瞼が一段と腫れて
左目が重たくて開けられない
―こんな顔で行きたくないな
今まで生きてきて学校を休んだ事のない俺が
初めて弱音を吐いた
―またいじめられたらどうしよう
何よりもそれが一番嫌だった
また痛い思いをするのかと思うと
異常に学校が怖くなった
「―大丈夫かよ!?遼太!?」
洗面台に来た兄が俺の顔を見て
驚いてつい声をあげた
「お兄ちゃん…」
「目のまわり真っ青じゃねぇかよ!昨日はそこまで腫れてなかったよな?」
当時高二だった兄が
心配した顔をして俺を見つめる
「母さんに言って、学校休ませてもらえよ。それとも病院で…」
昔はあまり会話がなかったけど
この辺りぐらいから、ちょくちょく兄と話すようになっていた
兄はとにかく頭がよかったから
宿題とかテスト前にはいつも勉強を教えてもらっていたんだ