涙の雨
“不在中”
保健室にかかる一枚の札
そして部屋の中には
若い男性が二人きり…
「怒ってないよ」
―その口調が既に怒ってるんですけど
その日の昼休み
俺は保健室で望月と会っていた
朝の出来事がまだ頭に残ってる
賢二は何も知らないから
仕方ないけど
俺と望月は恋人同士
あの状況であの答えはしょうがないじゃないか
「その言い方はもう怒ってます」
俺は望月から少し離れた場所で言った
「こんな事で怒ってどうするんだよ、子供じゃあるまいし」
そう言いながら
煙草を物凄い早さで吸っている
いつもなら二、三本なのに
灰皿の上には既に十本以上の吸い殻が残っていた
「だって…あぁ言うしか無いじゃないですか。賢二は俺達の事知らないし…」
「―だったら教えてやればいいさ」
「え…?」
望月の言葉に心臓がドクンと大きく動く
「俺と望月先生は付き合ってますって、後藤に話せばいいじゃないか」
笑いながら眼鏡を直し
煙草の火を灰皿で消した
望月の言ってる意味が
さっぱりわからない俺