涙の雨
天国から地獄へ
世の中はすでにクリスマス一色
あと二日で迎える聖なる日に
俺は何の楽しみも感じていなかった
「遼太はクリスマスど~すんの?」
「ん~俺は特に。賢二は何かやるの?」
昼ご飯を食べながら話す俺達
「俺んちは家族で飯食べに行くんだ!」
何でも高級レストランで食事をするらしく
あそこのケーキは最高に美味しいんだと
今からニヤニヤしていた
「それに、今年のプレゼントは新しいコンポ頼んだし!マジ楽しみだよ~」
隣で嬉しそうに昼飯を食べる賢二を
俺は時にからかいながら見つめた
―クリスマスか
でも顔とは裏腹に
心では意外に冷静な自分がいる
ウチの家は、毎年クリスマスになると母親がケーキを作っていた
だけどその年は用事が出来たらしく
特にパーティーみたいなものは予定されていなかった
父親もその日は学会に出ると言って、地方に泊まり
兄は初めて出来た彼女とデートに行くらしく
賢二みたいに毎日幸せそうに笑っている
俺だけ
一人だった