涙の雨
外はとにかく寒かった
走る度に鼻が痛くて喉がカラカラする
でも望月に早く会いたかったから
一度も歩く事も無く走り続けていた
大きな公園にある、シンボル的な噴水の前で待ち合わせ
外は暗くて公園には人もあまりいなかったけど
噴水の近くに行ったら
一人だけ立っている人間が見えた
―尚輝さんだ!
顔すらまだ見えてないのに
ついにやけてしまう
最後の力を振り絞って走り、噴水まで行くと
俺の姿に気づいた望月が
笑ってこっちを見たんだ
「…鼻が真っ赤だよ、遼太」
微笑みながら
俺の鼻を軽くつまむ望月
「だって…尚輝さんに…会いたかった…から…っ」
俺は望月を見つめ
息を切らしながら言った
ファー付きの黒いダウンジャケットにジーパン
首には紺のバーバリーのマフラーを巻いて、スニーカーを履いていた
「…冷えちゃったけど、飲む?」
ダウンジャケットのポケットから取り出したのは
少しだけあったかい缶コーヒーだった