涙の雨

多分ポケットの中でずっと握ってたんだと思う

「…ありがとうございます」



俺達は噴水の所に座って

俺は缶コーヒーを開けた



コーヒーを飲むのはあの時が生まれて初めてで


自分の中で大人の飲み物だとずっと思ってた



だって苦そうだし


香ばしい匂いがあまり好きじゃなかったから




望月の家に行っても、飲むのは紅茶とかお茶で


その反対に望月は

いつもコーヒーを飲んでいた





缶コーヒーを一口飲むと

ほのかに甘くて、すんなり飲めたのが意外だった



その味が


俺を少しだけ大人にしてくれる





「遼太を待つ間飲もうと思ったんだけど、結局飲まなかったんだ。少し飲みにくい?」

「いえ…、大丈夫です。何か尚輝さんの味がします」


俺は照れながら望月に言った



キスをすると

たまにコーヒーの味がする時があったからだ





外は冷たい北風が吹いて

缶コーヒーの温かさだけでは、充分に体を暖める事が出来なかった



俺が鼻をすすりながら飲んでると

隣に座る望月が優しくこう言ってくれた
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