涙の雨
「俺…、尚輝さんと別れたくないです!お願いします!俺ちゃんと謝るから…!」
今にでも泣き出してしまいそうな気持ちを
グッと堪えながら俺は言った
「尚輝さんっ…」
「―そのマフラーはもう返さなくていい。だから会うのはもう止めよう」
俺がどんなに言っても
望月の気持ちは変わらなかった
なのに
望月は終始辛そうな表情を浮かべている
「冷えてきたね、家まで送るよ」
そう言うと、眼鏡を直しながら立ち上がる
俺は下をジッと見つめたまま
ワザと望月を見ようとしなかった
「…遼太」
「―いいです。俺、一人で帰りますから」
少し投げやりに言うと
俺の頭をポンと軽く叩いて、望月は行ってしまった
姿を見なくても望月の足音で
俺達の距離がどんどん離れていくのがわかる
―クリスマスに別れるなんて
最低の記念日だよ
その時強い北風が吹いて
空き缶がその風で勢いよく飛ばされてしまった
俺は重い腰を上げ、飛ばされた空き缶を取ると
誰もいない公園のゴミ箱に捨てて
そのまま家に帰って行った