涙の雨

「何、しけたツラ下げてんだ?」

その時、突然俺に声をかけてきたのは


山田だった




「先輩…」

「俺も同じ総武線なんだ。遼太とまさか会うなんてな」


ニッと笑いながら俺を見つめてる



その笑顔はいつも同じで

俺みたいにすぐ落ち込む人間とは大違いだ



「尚輝とケンカでもしたか~?その様子じゃ」


俺の顔を覗き込む山田



お互いの顔の近さに俺は恥ずかしくなって

山田からそっぽを向いた



「ケンカ…じゃないです」

「じゃ、何だ?原因は友達か?」



「―それでもないです」



ん~と悩む素振りを見せる山田


俺はその姿を横目で見ながらこう言った





「尚輝さんとはもう別れました」





その一言に驚く山田

「クリスマスの日に、別れようって…尚輝さんから」



あまり思い出したくない


でも冷たい風が吹く度に

あの時の寒さを思い出してしまう




それと同時に


コーヒーの味が忘れられなかった




「尚輝がねぇ…」


山田はそう言うと


近くにあったベンチに座り

遼太も座れよと俺を強引に隣へ座らせた
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