Sin(私と彼の罪)
不思議な気分だった。
明るいなんて、生まれてこのかた言われたことがあるだろうか。
「……」
暗い夜道を歩きながら、先程カナミに指摘されたことを考える。
夜の住宅街は人がまばらでどこか薄気味悪い。
冷たい風に身を縮ませながら自宅の冷蔵庫を思い出して、スーパーへと方向転換する。
そういえば、部屋も自炊してる様には見えなかった。
ちょっと怠けてたな、私。
これからは節約しなきゃなんだし、料理を作ろう。
それにしても、最近の自分がわからない。
まるで知らない私がもう一人いるよう。
違和感。それだけじゃ言いかえられない。
やっぱり、あの男に会ってから歯車がちゃんとあっていない気がする。
そんなことは生まれて初めてだし、嫌な予感がしてやまない。
夜でも煌々とぎらつく店内に入ると、生温かい温度に包まれる。
お決まりのBGMが申し訳程度に流れている。
私はカゴに日持ちのよさそうな野菜や、割引された肉や冷凍食品を詰め込んだ。
最後にカートンを買おうとして、改めて煙草の銘柄に疑問を抱く。
私、どうしてこの煙草を選んだんだろう。
メンソールが好きだったはず。
でも、今手に取っているのは紛れもなくそれではない。
女が好みそうな種類じゃなくて、真黒なパッケージ。
普通ならこんなの買わないのに。
友人の誰かが吸ってたんだっけ?
たぶん、そうだ。
じゃないとこんなの見もしない。
この煙草には見覚えがある。
懐かしい、と思う。
もういいや、と思ってカゴに乱雑に突っ込んだ。
すると背後から声がした。