Sin(私と彼の罪)
抱きしめた彼女の体は子供のように華奢で、少しでも力を入れれば壊れてしまいそうだった。
バスタオルでぐるぐるに包み、適当なコートを引っ張り出して彼女をくるむ。
その間も志乃は血の気のない顔を歪ませ……まるで、何かに耐えるようだった。
俺は壊れ物を扱うようにそっと抱え込み、彼女の部屋を出る。
いくら命に別状はないとは言っても、きちんとした治療が必要だ。
本当は好ましくないが、彼女を本部に連れていくしかない。
病院も考えたが、ヨコイに盾ついた今は得策ではない。
どこに奴の部下がいるかわからないからだ。
俺は車の後部座席に彼女をそっと下ろし、自分は運転席に座った。
エンジンをつけ、ハンドルを握る。
バックミラーで見た彼女が余りにも儚くて、目をそらした。
アクセルを踏む足が、強ばる。
なんで、死のうと思ったんだ。
志乃。
お前、何があったんだよ。
死なないでくれ。
死なないでくれよ。
ふつふつと、胃のなかのものが消化不良を起こしているようだ。
「……クソッ!!!」
ダンッ
たまらなくなり、ハンドルを殴る。
しかし何が変わるわけでもない。
「……畜生」
ため息をつき、もう一度ハンドルを握る。
やけに汗ばんでいて、気持ちが悪かった。