Sin(私と彼の罪)
本部に到着すると、真っ先に俺を出迎えたのはスガヤだった。
もちろん口元に笑みを携えて。
「おかえり」
後ろに背負った志乃をチラリと見て、その癖のある低い声で「話がある」と言った。
本部といってもただの雑居ビルだ。
大きいわけでもなく、小さいわけでもないただのビル。
いくつも部屋があるが、その中に俺専用の部屋がある。
医学をかじった者もここに住んでいるので、組織でケガを負った者は本部に運ばれる。
一刻も早く志乃をそいつに診せたかった。
だから正直言って、今のスガヤは無視したい。
「それどころじゃねぇんだよ」
半ば強引に彼の前を過ぎようとする。
しかし言葉で止められる。
「まあ、そう言うな」
心の中で舌打ちをする。
「…これ見りゃわかるだろ。今は急いでる」
「そうか。でもお前は聞いておいたほうがいいと思うけどな」
「なら後で聞く」
俺はもう一度、足を踏み出した。
「その…女の話でも、か?」
「…どういう事だよ」
無意識にスガヤを睨み付けていた。
俺たちの組織は、強い。
それを牛耳るスガヤも………強い。
40代とは思えないほどの身のこなし。
それに混在する貫禄を持ったオーラ。
「志乃。………そういう名前だったかな?ヨージが面白いことを言っていたなあ」
こいつは紛れもなく、恐ろしい男だ。