Sin(私と彼の罪)
「まあでも、聞きたいことは聞けたよ」
満足そうな様子から見て、ヨージから絞るだけ絞ったのだろう。
その後でこれだけ正常でいられるのだから、この男がどれだけ狂っているのかがわかる。
「海江田と、諸星のことだがあれはやはりヨージの仕業だった」
タキがため息を吐くように、そう言った。
こいつも相当、疲れてる。
いつもは鋭い眼光が、今は霞んでみえる。
「そうか」
「ああ。まあ写真をすり替えた時点で俺は気付いたんだがな」
「なんだと?それで俺に替え玉を殺らせたのかよ」
「スガヤに報告したら、泳がせておけと言われたんだ。しょうがないだろ」
「…ああ、そうかよ」
疲労のせいか、怒りさえも生まれない。
ただ、脱力して俺は目がしらに手をあてる。
するとスガヤが口を開いた。
「ごめんなあ、善。タキには全部伝えてあったんだよなあ」
「全部?」
「そうさ。ぜーんぶ」
「……説明しろよ、タキ」
スガヤの相手が面倒になった俺は、こいつなら簡潔に教えてくれるだろうと思い、タキを指名した。
実際問題、タキのほうが無駄がない。
スガヤに話させれば、雑談と大げさな誇張のせいで大幅なタイムロスを食らう。
「だから、全部知ってんだよ」
前言撤回。
簡潔すぎる。
「なにを?」
そう聞き返せば、眉間にシワをよせて今度こそため息をついた。
「組織を裏切った人間。俺たちは多くても2人だと断定していた」
「成る程。俺も疑われてたわけか」
「そうだ。善かヨージ、または善とヨージが裏切ったのはわかってたんだ」
「それじゃ、俺も泳がされてたってわけか」
「そうなるな」
何の負い目もなく、淡々と話すタキはやはり頭がいいと感じた。
俺も大概、安く見られたもんだ。