Sin(私と彼の罪)
「ところで、ヨージが面白いことを言っていたな」
思い出したように、スガヤが口を開いた。
直感で志乃の話だと気付く。
やめてくれ。
そんな楽しそうな顔、するな。
「…言えよ」
スガヤは志乃に近づく。
触ったら殴る、と思いながらその背中を睨む。
奴は彼女の顔を覗き込んだが、それ以外のことはしなかった。
「可哀想になあ」
ぽつり、と一言落としてから、今度は俺の前に立ちはだかる。
見下された俺は、素直にスガヤを見上げることしかできない。
「ヨージは彼女の妹を、殺したそうだぞ」
そんな。
茫然と、スガヤを見ることしかできない。
そんな俺に構わず、スガヤは続ける。
「彼女の携帯に、そのときの動画と写真を送ったそうだ。そんなもの、見たくないだろうになあ」
ははは、と笑ってスガヤは肩をすくめる。
俺は立ち上がり、彼女の側によった。
被せたコートのポケットに突っ込んだ携帯を取り出す。
白いシンプルな携帯。
受信ボックスを開くと、そこには同じアドレスからおびただしい量のメールが届いていた。
すべてのメールに添付ファイルと同じ内容の文が書かれている。
一つ目を開くと、まず添付ファイルが開かれた。
「……」
ファイルは写真だった。
若い女が、血塗れで倒れている。
顔を見れば、それが志乃の愛するシイナちゃんだとすぐにわかった。
それと同時に、その額に穴が開いているのが見えた。
場所は、わからない。
コンクリートの地面からみて、そういうコトをする専用の部屋だろう。
本文を見るとそこには「秘密を漏らした罰だ」と表示されていた。
次のファイルも、その次も。
全て、シイナちゃんの無惨な姿。
死体に慣れている俺でも、どこかゾッとする写真ばかりだ。
そうグロテスクな訳ではないが、何故だろう。
今にも目を開きそうな彼女の姿は、脳天に空けられた穴と、あまりに不釣り合いだった。