Sin(私と彼の罪)
「シノじゃないか」
聞き覚えのある声に振り向く。
「店長」
浅黒い肌の彼がそこに立っていた。
手には私と同じようにカゴが握られている。
興味本位でのぞくと、酒と雑誌とカップ麺というなんともわかりやすい商品が入っていた。
「この辺ってのは知ってたけど、まさか会うなんてな」
「そうですね。店長も家近いんですか」
「おう。すぐそこだぜ」
くい、とあごで指す。
私とかなり背が違うから、喉の動きがリアルに見えてしまった。
「よかった、私ストーカーされてるのかと」
「はっ。お前みたいなちんちくりん相手にするか。俺はな、オトナの女にしか興味ない」
「店長からみたオトナの女って、熟女ですか」
「ふふ、お前にはわかんねーよ」
怪しい笑みを見せて頭を小突かれる。
痛い、と反論するとそうかそうかと楽しそうに笑った。
そういうことするオトナってどうかと思います。
「にしてもお前、大分買うな。自炊してるんだ?」
「ええ、バイト先の自給が安いので」
「お前な…」
「じゃあ店長今度奢ってください」
「おう、いいよ」
冗談で言ったのに返ってきたのは快い返事だった。
拍子抜けされて黙ると「なんだよ、お前が言ったんだろ」と呆れられた。
「本当にいいんですか?私ちゃんと食べますよ?」
「いいって、雇われ店長だからってお前と同じ給料じゃないんだから」
「ですよね。ご馳走さまです」
「お、切り替えはやいな。ただしな~」
にやりと微笑むその顔を見て、不信感が漂う。
「お前の料理を食わせろ」
「…は?」