Sin(私と彼の罪)
「どういうつもりなの」
流れで私の家までついてきた男を、部屋に上げてしまった。
その後悔に頭を悩ませながら、呻くように問いただす。
当の本人はリラックスして私の部屋で寛いでいる。
あ、そこは私のお気に入りの場所。
クッションに持たれながらテレビをみる男は、やっぱり美しくて腹が立つ。
サラサラと動く度に揺れる艶やかな黒髪。
服ごしにもわかる引き締まった身体。
極めつけは、その漆黒の瞳。
どんな女でも、ぐらりと傾いてしまいそうな恵まれた容姿だ。
「どういうつもりって?」
「だから!なんでここまで来たの?なんか用とかじゃないの?」
「まあ、別にいいだろ。腹減った、メシ」
なんで見ず知らずの男に振る舞わなければいけない、と口に出しそうになってやめる。
渋々、私は買ってきた食材を取り出して二人前の料理を作った。
なにしろ、私もお腹が空いたのだった。
「ほらよ」
できた料理を荒くテーブルに置く。
男は「うまそー」と声を上げた。
その表情は心底うれしそうで、若干戸惑う。
適当に作ったのであんまりおいしくないと思う。
だからって文句は言わせない、なんて強気な私だが、実際に男が食べる瞬間をちらりと見てしまった。
「うまい」
なんてこれまた不敵に笑うもんだから、苛立ちも忘れてしまう。
どうもその瞳が細められると、どきりとする。
料理を食べ終え、無言になると私は意を決して最大の謎を迫った。
「私たち、どこで会ったの?」
「だから、居酒屋。駅前のビルの」
そう言われても、ピンとこない。