Sin(私と彼の罪)
控え室に入ると、そこには携帯をいじるカナミの姿があった。
一番近くにあった椅子を引きずり彼女の隣に座る。
「休憩?」
「まあね、シノは上がりか」
「オサキシツレイシマス」
片言でカナミをからかうと、明らかにその表情が曇った。
「…怪しーい」
自分のピンクゴールドの携帯をパチンと閉じると、その目が本格的に私に向けられる。
まるでネコがネズミを捕まえるときのように、彼女の目が光った。
「?なにが」
「シノ、男でもできた?」
思わずギクリ、とした。
でも、いやいや。
ゼンは私のオトコじゃない。
断じて違う。
「できてないよ」
「ふぅ~ん…?」
意味ありげに私を見つめるカナミ。
突き刺さるような視線が痛い。
…まさか!
私はこの間のことを思い出して、はっとした。
店長に、ゼンのことを聞いたのかもしれない。
いや、でも待てよ。
あのあと私は店長にちゃんと言ったのだ。
ゼンは彼氏なんかじゃないと。
そうしたらアイツは「そうかそうか、まだ、彼氏じゃないんだな」なんて残念そうに言ってた。
仕舞には「まあ頑張れよ!」なんて背中をたたかれ、励まされた。
店長が言ったんじゃないと思うんだけど。
でも、じゃあカナミは何故私にこんな質問をするのだろうか。
私は訝しげに彼女をみた。