Sin(私と彼の罪)
「どうしてって顔ね?」
「ハイ」
カナミが顎を手に乗せて、距離が近くなる。
長い爪に綺麗に塗られたネイルがきらきらと光った。
「最近シノってば早番ばっかじゃない?」
そう言われてピンときた。
成る程。彼女も嫌に鋭い。
「夜にあわなきゃならない相手でもいるのかな、て思って」
で、どうなのよ?
さっきよりもきつく問われる。
そんな迫力に尻込みしそうになる。
「ないよ。早番なのは、夜ご飯作ってるから」
「夜ご飯?」
「そう。金欠なんだって」
「へえ。どおりで最近よく入ってると思った」
「フリーターですいませんね」
「なによ、男じゃないのね」
「そうだって言ってるじゃんっ」
それでも口を尖らせて不満そうな彼女に呆れる。
この勘のよさには平伏するけど、気の強さはどうにかならないだろうか。
少しするとカナミは休憩時間が終わったようで、戻っていった。
「なんかあったら教えてね」と、残して。
カナミの居なくなった控え室で堂々とため息をつく。
確かに、最近は早番ばかりだった。
その理由はご飯を作っているからなんだけど、一つ語弊がある。
一人で食べているわけではないのだ。