Sin(私と彼の罪)
なんで、こんなものがあるのだろう。
私、痛いのは嫌いだ。
そういうシュミはない。
明らかに事故ではなく故意的につけられたそれを指でなぞる。
痛くはないはずなのに、心がざわつく。
心の奥で、何かが引っ掛かる。
最近は少し不思議なことがありすぎた。
だからすこし混乱しているだけだ。
時期が過ぎれば、なんでもなかったように思いだすはず。
自分にそう言い聞かせる。
身に覚えのないできごとが重なったためか、ひどく疲れている。
それでもバイトには行かなくては。
なによりお金がないし。
ゼンのことよりも、今は自分のことを考えなくては。
気を取り直して、化粧水に手を伸ばした。
冷たくて、気持ちがいい。
化粧をすれば、いつもの自分が戻ってきたような気がした。
今日はカナミも店長もいるし、上がったら飲みにでもいこうかな。
一人の夜は、あんまり好きじゃない。
そうだ、店長に奢ってもらおう。
たんさん飲んで、食べて、めんどくさいことは考えなければいい。