Sin(私と彼の罪)
がやがやとした店内は、いるだけで気分が高揚する。
まるで店自体がお酒のよう。
そのはず、なのだが。
私は違っていた。
「それでえ~?シノちゃんの未来のカレシとはどうなんですかあ~?」
「やっぱシノいたんじゃあん~言いなさいよお、恥ずかしがりやさんっ」
お酒がいい感じにまわって、出来上がった二人を相手にするのは素晴らしく根気がいる。
もちろんそれを私が備えているはずもなく。
「知らない。アッチ行って」
既に苛立ちもピークとなり、とにかく流す。
しかも店長は何気にカナミに全部話してしまった。(真横で)
「ふふーん。それで最近のシノは落ち着きがないのね~?」
「いや別にいつもと変わらないです」
「無理だよシノ。お前自分じゃなんとも思ってないみたいだけど、顔に出てるから」
偉そうに言い放った店長を睨む。
「おーコワ」
「なんでそんな機嫌悪いのよ?」
ケラケラと能天気に笑うカナミに頭痛がした。
この二人は人の勘に触るようなことばかり言う。
「なんかアイツとあったんか?」
突然、真顔になる店長に思わず口をつぐむ。
もともと濃い顔立ちなので、真顔になると余計に凄みがある。