Sin(私と彼の罪)
「あの…大丈夫ですか」
私は驚いてその人の顔をみた。
そして、より驚いた。
「あ…えと…」
「たてますか?」
そう言ってにっこり笑った姿はホストそのもの。
風貌だけでアッチの世界の人なんだと考えつく。
コワイヒト、カカワルベカラズ。
そう警報が鳴る頭を押しやって、私はこの惨めな自分をそのホストに起こしてもらった。
「ご、ごめんなさい。酔っ払って、転んで…」
まさに今穴があれば入りたい。
そしてこの男が死ぬまで出たくない。
とにかく恥ずかしい。
「いえいえ。酒弱いんだから気を付けて下さい」
「ほんとにありがとうございます…」
お礼を言いながら、男の姿を観察する。
長めの前髪に、明るい髪色。
ボタンを大胆に開け放ったスーツにアクセサリー類がちゃらちゃらと。
まるで新宿でキャッチを受けてるような光景だ。
まあ、ここは住宅街ど真ん中だが。
「歩きってことは家近いんですよね?」
「あ、すぐそこです」
くいっと指で方向をさす。
「じゃ、送りますよ」
そこで可愛らしい営業スマイル。
思わず私は怯む。
「い、いや!悪いんでっ大丈夫!」
「まあまあ。それに危ないですよ、そんな状態じゃ」
「…」
確かに。
何も言い返せなかった。
ここは、そのほうが得策だ。
「あの…お願いします」
小さくそういうと、やっぱりホストは営業スマイルで「ハイ」と言った。
変に納得した私は、手をひく男の後についていった。