Sin(私と彼の罪)
フラフラだった私は、ホストの肩を借りながら部屋の前まで着いた。
何度か気持ち悪さの波を越えながら、やっと着いた自分の家にほっとする。
「本当に、どうもありがとう」
「いえいえ」
にっこり。
常にスマイルな彼。
アレ…
「もう、大丈夫なんで…」
帰っていいですよ。
そう言おうと思ったが、なんだか失礼に聞こえる。
しかし、なぜかその場を動こうとしないホスト。
「…?」
私は小さな不信感を抱いたが、早く眠りたかったため鍵を差し込んだ。
「っ?」
その慣れてしまった感触にまさか、と思う。
私は背後のホストにも構わず、慌てて自分の部屋にどたどたと入って行った。
「…ゼン?」
「おう。オカエリ」
そこにいたのは、やっぱり私の特等席を我が物顔で居座る真っ黒な男だった。
煙草をぷかぷかとふかせてちらりと私を見て、口の端をつりあげる。
「アンタっ…」
なんでいるのよ、と続けようとして、口を押さえる。
突然、最高潮の吐き気に襲われて目の前が暗くなる。
「…っ!!!」
私はもつれそうな足を必死で動かしてトイレに向かった。
「あ?どうした?」
後ろからゼンがついてくるのがわかったが、かまってられない!
私は便器に向かって思いっきり吐いた。
吐きまくった。