Sin(私と彼の罪)
その目が、私を責める。
悲しい目で、私を……
「やだよ」
ゼンが深くため息をついて、俯いた。
何か悪いことをしている気分になって、後ろめたくなる。
「…だって、ゼンのケータイ知らない」
私がそう言うと、ぱっと顔を上げたゼンは、がっつり眉をひそめた。
「ふざけんなよ。入ってるだろーが」
「は?入れた記憶ないし」
「アホウ」と呟いて私を解放したゼンは、あろうことか人のカバンを漁って携帯を取り出した。
カチカチッといじってから画面を見せる。
すると、そこには携帯番号が表示されていた。
「しっかり登録してるじゃねーか」
「嘘。いつ?」
「最初だろ。忘れてんじゃねーよ」
なんて言ってソファにどっかりと腰を下ろした。
私は自分の携帯を奪い返すと、確かにそこにはゼン、と登録されている。
「ほらな」
偉そうな姿はまるで百獣の王の様。
服はいつでも黒っぽいのばっかりで、決して人には懐かない。
なんて高貴で美しい生き物。
「…むかつく男」
「なんとでも言え」
「ばか、あほ、くそ」
「ふ、そんだけ?」
「……」
「なんかあったら連絡しろ。いいな?」
私はきっと既に、侵されている。
この、男に。
その証拠に、馬鹿みたいに頷いてしまった。