Sin(私と彼の罪)
逃げようとする私を変に思ったのか、いつかされたように、強く腕を捕まれる。
私はその体温に意識が奪われて、ゼンの表情が変わったのに全く気付かなかった。
「シノ…お前なんでこんなに冷たいんだよ」
「え…」
そんなに顔を真っ青にするほど冷たいのだろうか。
ゼンは、途端に私の手を両手で包み込み、温度を分けるように握りしめた。
私は異常な反応を見せるゼンに驚いた。
それと同時に、あの日の彼の顔もフラッシュバックする。
「ゼン…」
無機質で、透明な瞳。
傷ついた、百獣の王。
まるで、初めて名乗ったときみたいに彼の表情は、悲しげで、恐ろしく美しかった。
それを見て、実感する。
…欲しい。
私は、求めている。
その、表情も。全部。
彼の、すべてが………
「って、えぇ?!」
ぐらり、と視界が回転して、自分の身体を支える二本の腕にしがみつく。
宙ぶらりんにされた私の足はバタバタと空気を蹴った。
惚けた私をいいことに、ゼンは私の身体を軽々と持ち上げた。
「ちょ、降ろして!」
「ダメ」
そのまま風呂場へ連れていかれて、熱い湯船に降ろされる。
ゼンはシャワーを出して、温かくなったのを確認すると、あろう事か私に勢いよくかけてきた。