Sin(私と彼の罪)
「バカ!なに……すんのっ!」
「これが一番はやいだろ」
「だからって!」
「ハイハイ」
ゼンは私の身体にお湯を当てるのをやめた。
と、思ったら今度は頭からかけられる。
私の悲鳴は風呂場でボワンと響いた。
容赦なく降り掛かるお湯が、着たままの服や乾きかけの髪をびちょびちょにしていく。
そのせいで体温はぐんぐんと上がっていったが、やり方が強引じゃないか。
風呂なら一人でも入れる。
私にシャワーをあて続ける張本人は、仁王立ちをしてこちらを見下している。
それを睨むと、ゼンのその口元が、ゆるりと上がった。
「ふっ…無様」
カチン。
「アンっタ…」
今の呟きが、私の頭を着火したのは間違いない。
勢いよく立ち上がって、ゼンの手に握られたシャワーを掴む。
一瞬、怯んだ彼にお返しというようにお湯をかけてやった。
「ふふっ、ブザマ」
私はゆるゆると緩む自分の唇を動かして、呟いてみせた。
さっき彼がやったように。
「……」
しかし、ゼンはつっ立っているだけで反応をみせない。
真っ黒な髪からは水滴がぽたぽたと垂れて、顔や首に張りついていた。
彼の頬をつたう水に、思わずどきりとした。
ゼンはまるで大雨に打たれたような姿で、私は捨てられた猫を連想する。
その様が、やけにセクシーで男のくせに異様な色香を漂わす。
濡れたその首筋に、触れたい。
私は確かにそう思った。