Sin(私と彼の罪)
無意識に、手を伸ばしていた。
私の指先が、熱を持ったゼンの肌に触れる。
とくん、とくんと、彼が生きている律動を感じる。
私を見つめる瞳に、戸惑いが映った。
「シノ」
聞き慣れた声が、私の中で反復する。
責めるように、慰めるように。
ワタシハ、イツカモ、コウ、ヨバレテイタ。
デモ、イツ…――?
駆り立てる不安を掻き消すように彼の名前を呼ぶ。
「ゼン」
「…?」
「ゼン…私、は」
擦れる声を、絞りだす。
様子がおかしいと思ったのか、彼は私の濡れた頭に触れた。
そのまま手が動いて、頬をやわらかく包んだ。
温かいそれに、切なくなる。
「どうした?」
私を落ち着かせるように、優しく問い掛ける。
「私、は…」
ワタシ、ハ。
ゼンの瞳から、目が逸らせなくなる。
「私は、何か忘れてる…?」
私の言葉に、ゼンの表情が凍った。
元々白い肌が、青ざめたように見えた。
「シノ…お前…」
自分の頬に、温かいモノが流れたのを感じた。
視界がぐらぐらと歪んで、水の中にいるような錯覚を起こす。
目頭が熱くなって、ぼろぼろと涙が落ちる。
何故かはわからない。
ただただ、
全身を巣食うようなシラナイ感情が、私を支配したのを感じた。