Sin(私と彼の罪)
「怖い」
そう漏らしたのと同時に、私は彼の腕の中に引き込まれた。
濡れた身体が、くっつきあう。
「シノ」
私を呼ぶゼンの声が、かすかに震えていた。
その胸に顔を埋める。
止まらない涙を拭うこともせず、彼にもたれかかる。
あの煙草の匂いが、キツく香った。
「…」
ゼンが小さな声で何か言ったが、私の耳までは届かなかった。
抱き締められ、彼の生暖かい息が耳の裏にかかる。
それがくすぐったくて身をよじらせると、私を固定するかのように腕の力が強くなった。
私の目の前には、切望したゼンの首筋があった。
迷わず私はそこに口付けた。
びくりと、ゼンが揺れたのをきっかけに、腕の力が少し緩む。
「ゼン、好き」
それはまるで水が溢れるように、自然と私の口からこぼれた。
「好きなの…ねえ」
(キス、して)
言い終わる前に、私の唇は塞がれた。
熱くて、柔らかい彼の唇で。
目を閉じるのも忘れた私は近すぎる彼の瞳に釘付けになる。
ゼンもまた、目を閉じていなかった。
漆黒の闇に、捕らわれる。
「…ん」
何度も角度を変えて、迫る唇。
私はそれに翻弄されながら、身体の全てを彼に委ねた。