Sin(私と彼の罪)
「あっ!」
…道、間違えた。
嫌だ、ぼーっとしてた。
慌ててUターンしてもとの道を目指す。
気付かないうちに、大きな病院の前まで来ていた。
思ったよりも自分の安月給に堪えたのかもしれない。
なんて自嘲的に鼻で笑う。
やだな、もう。
あの男に会ってからなんだか変だ。
なにか頭のどこかでひっかかる。
そのせいか身体が重く感じる。
まるで見えない物体が体内にいるみたい。
…気味が悪いわ。
ポケットから煙草をとりだす。
ゆれる紫煙を見ると、心が安らぐ錯覚がした。
あたりは薄暗くなって、昼間よりも大分気温が下がったこの時間帯。
すれ違う人々は足早に帰路につく。
私は自分の部屋を目指して早歩きになる。
小気味よいヒールの音がテンポよく鳴らされる。
嫌だ。
いや。
こんな気分になるのは、青白い街灯のせい?
それとも薄暗い夕方のせい?
なんで、サミシイなんて感じるの。
今日は早く帰ろう。
帰ったら、シャワーを浴びて寝てしまおう。
あの男のことは、忘れよう。