Sin(私と彼の罪)
「それで外に出たら、ヨコイさんが待ってて。別の出入り口から、店の地下室に連れてかれた」
「…ああ」
「地下室を見て、驚いた。だって、まさか自分がいつも働いている店に真下であんなことが行われていたなんて」
「地下でか?どういうことだよ」
志乃は改めて俺と目を合わせる。
「…男の人たちが、たくさん居て……カジノ?かな…してた」
「カジノ…」
なるほど。
スガヤの言っていたヨコイの資金源はその地下室でのカジノだ。
そこにヨコイ本人が出入りしているのから見て、アイツの財布が関係してるのも間違いはない。
どうせ特別薄汚い取引でも行っているのだろう。
内容など聞きたくもない。
「連れていかれて、どうした?」
「普通にヨコイさんに接待したんだけど…」
「だけど…?」
「か、帰るときに」
「……?」
「ここを見たということは、どういうことかわかるな?って…!!」
「……チクショウ」
志乃は感情を押し殺した声で、呻く。
俺の肩に彼女の額があてられる。
俺は心の中で盛大に溜息をついた。
こりゃあ、面倒くさい。
まさかグリモワールがここまで深くかかわっているとは。
地下にそんな場所があるだなんて、店も一枚噛んでいるじゃないか。
この世界に大きな影響力を持つ店だ。
決して強い組織がグリモワールの裏についているわけではないが、本当に恐ろしいのはその情報量だ。
多くの組織の者が、この店にばらしてほしくない情報を抱えている。
この世界に生きる者なら、敵にはまわしたくないと思うのが普通だ。
そして志乃までもが、ヨコイとここまで密接に関係があるとは。
俺は志乃の髪を撫で、きつく抱き締めた。
そんなの、脅しじゃないか。
組織の秘密を知った人間だ。
ヨコイ達は志乃に目をつけるだろう。
俺も職業柄、脅しや拷問など平気でやるが、彼女は別だ。
志乃は、違う。
違うんだよ。