Sin(私と彼の罪)
店の一番端に佇む男を観察する。
黒いスーツに、ボタンの空いたシャツ。
腕には高級時計。
指にもいくつかリングがはめられている。
その明るい髪がちらちらと動くたびに、俺は気を張る。
だが、特になにが起こるわけでもなく彼はのんびりと酒を飲むだけだった。
俺は、苛立っていた。
進展のない現状に。
そして確かな情報を得られない、自分に。
既にタキ、ヨージの周辺の情報は調べてある。
しかし、どれも直接ヨコイと照らし合わせて当てはまるようなものはないのだ。
まるで二人の潔白を確かめているような、そんな作業な気がしてならない。
尾行も何度もしたが、怪しい動きはない。
携帯のほうもチェックしたが、これといった収穫はない。
もし、タキが本当に裏切り者ならばここまで隠しきれるのだろうか。
ヨージならば、どうだ?
一向に尻尾を掴むことのできない俺は、裏切り者はこの二人ではないんじゃないか?という考えにたどり着く。
これだけ調べても、疑惑ひとつ出てこないのだ。
スガヤの言うことを信じたくないわけではないが、今の状態ならそう思ってしまうのも無理はない。
それにこの店に潜入してから、もう大分経つ。
そろそろどうにかしなければならない。
志乃のためにも。
「ね、善さん」
声のした方を向くと、先程の男………ヨージがいた。
明るい髪が、いちいち目につく。
俺とは対照的な色だ。
「オウ。どうした、なんかあったか」
「いえいえー。ただ、暇なんで話でもしましょうよ」
「俺は仕事中なんだよ、ふざけんな」
「えー!…俺も働きたかったなあぁ」
まるでホストのような風貌のヨージ。
見た目通り、女遊びはかなり派手だ。