Sin(私と彼の罪)
「お前はどうせ女目当てだろう」
そう言うと、ヨージはにへらと笑った。
「ばれましたか」なんて舌を出す。
「さすがはグリモワール。女のレベルが高いっすよね」
チラリと店員の女を見つめる。
どういうわけか、ヨージはモテるから怖い。
「お前が死ぬときは女に刺されたときだな」
「物騒なこと言わないで下さいよ~」
「あながち本当になるんじゃねぇの?」
「善さんこそ、人のこと言えないっすよ」
思わず、ぎくりとする。
こいつ、知ってたのかよ…。
別に隠してたつもりはないが、客にわかるほどベタベタしていたつもりもない。
他の従業員に話したこともない。
まさか彼女が俺との関係を言いふらすようなことをするとは思えない。
タキですら突っ込んでこなかったというのに。
女のことになるとやけに勘が働くのだ、この男は。
「志乃ちゃんでしたっけ?まあ俺の憧れの善さんレベルまではいかないけども、色白で美人っすよね~」
「……」
「まさか、彼女を選ぶなんてなぁ。善さん、好み変わったんですか?」
「…黙れよ」
「あれ?まさか本気だったり?」
俺が睨み付けると、しまったという顔をしてヨージは黙った。
はあ、と一息ついて口を開く。
「別に本気とかじゃねぇよ。あんま詮索すんな」
そう。
別に、本気とかじゃない。
ただ今までの女とは違うってだけだ。
守りたいと、思う。
でも、それだけだ。
それ以上でも、以下でもない。
俺は、俺だけしか信じない。
本気になるような女なんて、いらないんだよ。
あんな女、本気になんかなるはずがない。