Sin(私と彼の罪)
そう言ってにやりと悪戯に笑った彼女の首筋に、顔を埋める。
そのまま舐め上げると、志乃の口からは小さく吐息が漏れた。
俺は左肩と、鎖骨の間にキスをする。
そして入念にそこに唇を這わせた。
深く吸いついて、またひとつ赤を散らせる。
「志乃」
「…ん?」
「…誓うよ。お前を…守る」
そして俺は思い切り歯を立てて、白い彼女の肌に噛みついた。
頭上で呻き声が漏れた。
神に祈ったことなど一度もない。
俺はいつでも自分しか信じないし、それで満足していた。
でも。
でも、今は。
この柔らかい身体が、俺以外の手で血に染まらぬよう。
大きな瞳が、光を失わぬように。
ただただ、願う。
彼女だけは、志乃だけは、生きてくれ。
命なんて、あっけないものだ。
今、突然死ぬ人間がいてもおかしいことなんて一つもない。
現に俺は、何人の命を虫けらのように消してきただろうか。
でも、だからこそ。
だからこそ、志乃の命は守らなければいけない。
鉄のような味が口内に広がる。
口の端から、唾液と志乃の血液が混じった液体が零れた。
それを指で拭い、舐めとる。
まだ血の滲む生々しい傷痕も、同様に舐めてやった。
どうせならと、一生傷が消えないように、強く噛みついたので傷は深い。
真白な肌と対照的な俺の歯型が、毒々しいほど赤く染まっていた。
「…ありがと」
そう呟いた志乃はやはり、泣き顔だった。
その涙をぬぐう自分の指もやはり、深紅に濡れていた。