Sin(私と彼の罪)
冬が近づいているのだろう。
この間まで半袖一枚で熱いくらいであったのに、そう思いながらジャケットの襟を立てた。
ヨージから聞いた情報によれば、今夜ヨコイが店に訪れるらしい。
もちろん客として、だが。
タキは営業に入っているが、俺は休みの日であったので外で店の前を張ることにした。
もしこの情報が、相手の……タキかヨージの罠だったとしたら。
そうも考えたが、だったらそれはそれでちょうどいい。
向こうから仕掛けてきているのだ。
立ち向かってみせようじゃないか。
午前0時を過ぎてから、やっと黒い高級車が店の前に止まった。
外国製のメーカーでいかにも高そうである。
予想通り部下を従えて出てきたのは、颯爽とした身のこなしのヨコイだった。
裏の世界では名の通った男だ。
その威厳を醸し出す姿は凛々しく、自身に満ち溢れていた。
やがてヨコイ達が店の中に入っていったのを見送ると、俺は行動に移った。
早足で店の扉の前まで行き、ピストルを構える。
しゃがんで扉にぺたりと耳をつけ、中の様子を探った。
いつものように、こ洒落た音楽とともに何人もの男の声がしたが、ヨコイ達の話している内容までは分からなかった。
だが中にタキもヨージもいる。
もしものときがあっても、そのどちらか一人が援護についてくれるだろう。
俺は深呼吸をする。
夜空を仰ぎ、目をつむった。
こんなときに気になるのも、あの女のこと。
今は、何をしているだろうか。
きっと寝られるはずがない。
志乃。
一人で怯えて過ごす夜など、俺が消してやる。
お前が笑っていられる世界が、欲しいんだ。
変わったものだ、俺も。
無防備で、後先を考えない低脳な作戦だった。
だが、そんなの関係ない。
勝率など俺が上げてやる。
スガヤ。
お前にいいものをみせてやろうじゃあないか。