Sin(私と彼の罪)

パンパンパンッ




すばやく振り返り、発砲した。

もちろんヨコイ達を目掛けて。

射撃の腕に自身はあったが、そんな当てずっぽうな玉に奴らが当たるはずもなくいくつかの銃痕をテーブルや床に残しただけであった。

俺が立ち上がったと同時に戦闘態勢となったヨコイ達はたちまち俺にピストルを向ける。


客どもの悲鳴やうろたえる声などの騒音が起こる中、俺はテーブルを倒し盾にして息をついた。



「なんのつもりだ!」



スーツの男が喚く。

俺は構わずテーブルの陰から発砲を繰り返した。



「やめなさい」


すると、一際威厳を放ったヨコイの声が、静かに響いた。

あたりが突然静かになる。




…?


俺はピストルを構えたまま、耳をすませる。


「やめなさい、お前たち」

「し、しかし…」

「誰に向かって口を利いているのだ。やめろと言っている」

「…承知しました」



「善と言ったな。私はお前に危害を加えようとしているわけではない。だから銃を下ろしてそこから出てきなさい」






なにを考えている。

そんな危ない真似をするはずがないじゃないか。



「わかった。ならばそのままでよい」

「…」

「私たちが、今までお前に何もしなかったのは何故だと思う?」




クソ。
やっぱり、最初から俺たちの存在に気付いていたということか。

俺は心の中で舌打ちをして、ヨコイの言葉を待つ。



「お前はずいぶん私の部下を殺してくれた。だがな、恨んじゃいない。そいつらには運も腕もなかったと言うことだ」

「……」

「善よ、お前はどちらも持っている。その能力を買って、どうだ?私たちと共に働かないか?」



正気だろうか。

一番敵対している組織のエースとも呼ばれる俺を引き抜こうと考えるなんて。
だが、まあ引き抜けたらたしかにおいしい話だ。

スガヤの力を削げるし、自分の組織の戦力は増える。



問題は、それが俺だったということだ。



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