君がいる街
もうだめだと思った時。戸惑いがちに、トントンと準備室の扉がノックされた。
一条先生。と呼び掛けられたその声は、まさしく天の助けの声で。
教頭じゃん!!やった。やりました。いくら極悪人の基哉でも、教頭の前で、生徒虐待ともいえるこの状況のまま、招き入れることはないだろう。
内心、涙を流しながらガッツポーズ。でも、そんな俺は、コイツの腹黒までの精神を、よく理解していなかった。
「どうぞー。」
たった一言で。ヤツはなんとも俺の期待を打ち砕く。
え、何?このままいっちゃうの?
信じられないと顔を上げれば、人間のモノではないと思われる程の、悪い顔の基哉と目があった。
「教頭。俺の支配下だから。」
お前は一体、どんな教頭の弱味を握ったんだ。