君がいる街
「ああ、一条先生。貴重な昼休みにすいません。」
「いーえー。部屋がちょっとオヤジ臭くなるくらい、我慢出来なきゃ、人間やっていけないですよ。」
いや。もう最早お前人間じゃないじゃん。
悪魔じゃん。
心なしか、震えている教頭の声。面白い程に、俺のこの状況に対しては、ノータッチだ。
にーっこり黒く笑うヤツの顔が、見なくても優に想像出来る。
「ゴ、ゴホン。で、ですね。ほら、入ってきなさい。」
誰かに呼び掛ける教頭。それから少しして、誰かが準備室に入ってくる気配がした。
「この子が、今度一条先生のクラスに入る、新しい生徒です。」
その教頭の声に、俺は反射的に顔をそちらに向ける。でも机が邪魔して、見えるのは、膝から下だけ。
女子生徒だ。視界に映る上靴には、丁寧な字で桜月と書かれていた。
新しく・・・ってことは、転校生?