君がいる街
何だか楽しそうな基哉が、口を開く。
「昨日お前さー。俺の授業が終わった後、血相変えて走って行ったよなー。」
「・・・・」
「なっがーい黒髪の女だっけ?」
「・・・だから?」
聞き返せば、やっと基哉が立ち上がった。瞬間自然と床に倒れ込む体。
ああやばい。もう腕の感覚ないし。なんか背骨の真ん中、曲がってる気がする。
痛む体を堪え上を向けば、また嫌な笑みを浮かべている基哉。
すっとしゃがんで、ぺちぺちと俺のデコを叩くソイツ。
「・・・・もうすぐ。会えるんじゃねーの?」
「は?」
「一目惚れの、彼女に。」
一目、惚れ?
今していた会話の意外な結末に、眉をしかめてみせても。にーっこり笑ったままの基哉。
・・・・何を言ってるのか、さっぱり分からねーが。
取り敢えずその、気持ちが悪い笑顔を止めてほしい。